ご皇室から学ぶ「慰霊」とは
昭和天皇御製(昭和63年)
やすらけき世を祈りしもいまだならずくやしくもあるかきざしみゆれど
「やすらけき世」を祈って来たが、今の世はまだそうなっていない。
この御製が詠まれたのは終戦から43年。日本は経済復興も果たしていた。
では、昭和天皇が祈られた「やすらけき世」とは、単に戦争のない平和な世という意味ではない。
「やすらけき世」とは
死者たちにとって「安らかな世」、死者たちの霊を国民が心から悼み、慰め、鎮めることができる世という意味ではないか。
日本には伝統的に「死者とともに生きる」文化があり、国のために亡くなった人々や遺族を歌に詠み慰める (例)万葉集「防人の歌」、「挽歌」
戦後について歌人・岡野弘彦氏は
「同時代の死者の魂を、これほどおろそかにした時代は、過去の日本人の心の歴史にはなかった。」
と言われている。
上皇陛下御製(平成6年)
硫黄島二首の内の一首
精魂を込め戦ひし人未だ地下に眠りて島は悲しき
上皇陛下御製(平成10年)
国のため尽くさむとして戦に傷つきし人のうへを忘れず
陛下の御製は、兵士を犠牲者として憐れむものではない。「顕彰」すること、立派に戦った人たちであると言葉にすることでしか、魂を慰めることはできないとお考えになっているのではないだろうか。
(江崎道朗氏著:天皇家百五十年の戦い/2019年/ビジネス社)
令和7年06月09日